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【論文備忘録】Wiss et al. (2015) The Influence of Identifiability and Singularity in Moral Decision Making
Wiss et al. (2015). The Influence of Identifiability and Singularity in Moral Decision Making. Judgment and Decision Making, 10(5), 492-502.
- 目的
現実的なシナリオを利用したモラルジレンマ課題でidentifiabilityの影響を検討.
deontologist: ルールやモラルによって判断
consequentialist: 帰結する結果によって判断cf. identifiable victim effect
(寄付を求める場面で)寄付の対象が特定できる情報(顔写真や名前)を提示する場合,ただ統計情報などを提示するだけよりも寄付額が増加するidentifiabilityは常にwillingness to helpを高めるわけではない (Kogut & Ritov, 2005).
→ identifiabilityが高い”集団”に対しては寄付額や共感が低下する
→ identifiabilityが高い特定の”個人”に対して最も寄付や共感が集まりやすい (singularity effect)identifiabilityとsingularityは個別に検討されてきたため,統合的に効果性を検証する.
- 方法
参加者には1人(個人)あるいは5人(集団)の子供どちらにワクチンを寄付するか選択を求める
H1: ワクチンの寄付量はidentified > non-identified
H2: identifiabilityの効果は1人の子供 > 5人の子供 (singularity effect)4つの条件の設定
identified 1人 vs non-identified 5人
non-identified 1人 vs non-identified 5人
identified 1人 vs identified 5人
non-identified 1人 vs identified 5人
→ どちらにワクチンを寄付するか選択を求める
→ 心理尺度として”答えを出す難しさ”,”子供への共感”,”emotional reactance”に回答を求めるcf. emotional reactance (Berkowitz, 1973)
誰かを助けよという要求・義務が行動の自由を脅かすことで生じる反感スウェーデンとアメリカで各2回実験を実施.
- 結果
スウェーデンの実験ではidentifiabilityの効果はなし.
→ スウェーデンではidentifiedの場合,1人の子供を選択する頻度が低下
→ スウェーデンの女性の参加者は1人の子供を選択する傾向あり.女性はdeontological,男性はconsequentialな傾向.
アメリカの実験ではidentifiabilityの効果が見られた.
→ singularity effectもアメリカの結果のみ支持
→ アメリカでは性差なし- 考察・まとめ
identifiabilityが常にwillingness to helpを引き出すわけではない.
identifiabilityがmoral decisionに与える影響は特に複雑.emotional reactanceがwillingness to helpを低下させる媒介変数となっている.
→ identifiedな子供を助けなければいけないという圧力が選択する意図にネガティブな影響
→ スウェーデンでのみidentifiedな子供に対して高いemotional reactanceが確認されたスウェーデンとアメリカの文化差
スウェーデンは集団主義と平等性に価値がおかれる.
アメリカは個人主義と人権保障に価値がおかれる.
→ このような文化差が選択の傾向に違いを生じさせたのでは?2015-10-21 / Daisuke Kudo / 0
カテゴリー: 論文備忘録
・管理人:工藤大介 (Daisuke Kudo), Ph.D.
・所属:東北学院大学 准教授
・専門:社会心理学, 消費者行動, Русский язык
・その他:単冠湾泊地
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